その軽快なフットワーク、軽妙な語り口、筆の速さで尊敬している本名純氏の『民主化のパラドックス』をようやく読了した。 正直、もっと早く読むべきだった。本書に書かれている事柄のいくつかは、既に本名さん本人から、あるいは他の情報源から知っているものではあったが、それらが実に明快に提示されている。そして、とりわけインドネシアにおけるレフォルマシ(改革)以降の政治が、見事に自分の研究で描こうとしているものとリンクしている。 地域研究をやっている人間としては、次の言葉に早く自分で応えなければならないだろう。「その国の政治の日常に疎い理論家や実務家の視野にはおのずと限界がある。特に民主化の予期せぬインパクトは、彼らの目から一番遠いところで起きている。その重要性を発信できるのは、地域に密着して調査を進めてきた地域研究者であり、今以上に彼らの役割が期待されているときはない。」(18頁) インドネシアをフィールドとしている人だけではなく、政治学や開発学を専門とする人たち、あるいは民主化に興味がある人は是非読むべき一冊である。
Read Moreヴァディ・ラトナー著(市川惠理)『バニヤンの木陰で』河出書房新社、2013年。[ISBN: 978-4-309-20647-9] 僕と同年代の著者は、75〜79年にクメール・ルージュの支配を経験し、81年に母と共にアメリカに脱出した。その頃の僕は、今考えると大した悩みもなく、のほほんと田舎で暮していたわけで、その経験の密度の差に愕然とする。 この自伝的小説の原著は英語で書かれている。著者が中学に上がるくらいの年代からアメリカにいたのだから、当然と言えば当然なのだが、カンボジア人がカンボジアでの生活を描くのにクメール語を使わない(使えない)状況が、カンボジアの悲劇を際立たせているような気がする。(著者がクメール語を使えるか否かは、まだ知らないし、マーケットの問題もあるだろうが。) これから暫く忙しいのだけれども、時間を作って読んでみよう。
Read More本名純著『民主化のパラドックス—インドネシアにみるアジア政治の深層』岩波書店、2013年。[ISBN-978-4-00-024867-9] 千野境子著『インドネシア9・30クーデターの謎を解く—スカルノ、スハルト、CIA、毛沢東の影』草思社、2013年。[ISBN: 978-4-7942-2006-6]
Read Moreここのところ買った本をメモしてなかった。 Ayu Utami. Cerita Cinta Enrico. Jakarta: KPG, 2012. [ISBN: 978-979-91-0413-7] Robert Cribb. Gangsters and Revolutionaries: The Jakarta People’s Militia and the Indonesian Revolution 1945-1949. Jakarta and Kuala Lumpur: Equinox Publishing, 2009. [ISBN: 978-979-3780-71-9] David Hill. The Press in New Order Indonesia. Jakarta and Kuala Lumpur: Equinox Publishing, 2007. [ISBN: 979-3780-46-0] ここまでは、ジャカルタの紀伊国屋。以下、ジョグジャのグラメディア。
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